カキの養殖や発電などで島の経済活性化へ カギは「海洋深層水」 沖縄・久米島

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離島というと経済や産業の面で不利なイメージがあります。しかし沖縄県で今、島にしかない海の恵みを生かしてユニークで付加価値の高い商品開発や環境にやさしい発電などの取り組みが進んでいます。

海洋深層水にエビをつける

深層水

沖縄県那覇市の西、約100キロにある久米島ではクルマエビの生産量日本一を誇ります。エビをつける水はただの海水ではありません。

南西興産 宮原忍さん:
「エビは常温では暴れて選別、箱詰めができません。深層水で冷やしてエビおとなしくさせています」

海洋深層水とは、太陽の光が届かない200メートルより深い場所にある海水です。「水温が低い」「ウイルスや細菌が少ない」「植物の成長に必要な栄養素を豊富に含む」といった特徴があります。

海ブドウの養殖にも深層水を使う

冷たい9度前後の深層水でエビを仮死状態にします。海ブドウの養殖でも水は重要です。夏場に水温を下げたり、栄養を補ったりするために深層水を使います。

深層水を供給しているのは、沖縄県の海洋深層水研究所。沖合2.3キロメートル、水深612メートルから深層水をくみ上げています。久米島の取水量は日本最大です。

あたらないカキの養殖に取り組む

あたらないカキを養殖

本州から進出する企業もあります。飲食事業を営む「ゼネラル・オイスター・グループ」の研究施設。久米島で10年間取り組んでいるのが、カキ養殖の研究です。

その目的は世界初の“あたらないカキ”。完全陸上養殖の施設です。深層水は、ウイルスや細菌をほとんど含みません。深層水だけで育てれば、食中毒などのリスクが低いカキができるんです。

日本経済新聞社 兒玉章吾記者:
「すごく甘みが強くて、しっかりした味がします。磯臭さがほとんどなく、食べやすい印象です」

ジーオー・ファーム 鷲足 恭子社長:
「陸上養殖の大きな課題はエサ代やエネルギーコストです。久米島の地域資源を活用することによって、ランニングコストの軽減を図ることができます」

沖縄県海洋温度差発電の実証設備にも活用

ベンジャミン・マーティンさん

深層水は沖縄県海洋温度差発電の実証設備にも活用されています。

国際海洋資源エネルギー利活用 推進コンソーシアム
ベンジャミン・マーティンさん:
「表層水と深層水を使って、自然エネルギーをつくる設備です」

暖かい表層水で特殊な液体を蒸気に。蒸気でタービンを回して発電し、冷たい深層水で蒸気を液体に戻します。

マーティンさんは英語を教えるために久米島へ来たのが縁で、この施設で働くことになりました。深層水を使った温度差発電は国内唯一。これまで70か国以上の視察者に案内してきました。

黄色と赤色のエリア、表層水と深層水の温度差が大きい海域が温度差発電に適しています。

2026年ごろに1メガワットの発電所の稼働を目指す

2022年には同プロジェクトに商船三井が参加。2026年ごろに1メガワットの発電所の稼働を目指しています。

久米島町は深層水という海の恵みを生かして、経済を活性化するプランを描いています。

日本経済新聞社 兒玉記者:
「1つひとつの企業の技術は確立されてきている段階にあります。今後、投資を呼び込んでいくためには、さらなる取水管やインフラの整備がかかせなくなってきます」

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