撮影罪の検挙数、3カ月で21件 盗撮行為の線引き困難で処罰見送りも 弁護士が解説

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「撮影罪」の施行から3カ月。2023年7月13日から9月30日で検挙された件数は21件です。現状と課題について、性犯罪に詳しい「桜みらい法律事務所」の上谷さくら弁護士に話を聞きます。

3カ月で21件

――愛知県での撮影罪の検挙数は3カ月で21件でしたね。この数字をどのように捉えていますか。

もう少し多いのではないかと感じました。まだ法律ができたばかりなので、慎重に見ているのかもしれません。

――撮影罪が施行されて、抑止力につながっていると思いますか。

そういった側面もあるかもしれません。盗撮は面白半分や加害意識の少ない状態で行われているケースがかなりあると思います。刑法違反になって罪が重くなったことで重大に処罰されるのであれば、やめておこうと思う人たちも一定数いる可能性はあります。

――条例で取り締まることができない行為についても、撮影罪の適用範囲内とした方が良いのではという声もありますね。

いわゆる“アスリート盗撮”といわれるものや、街を歩いている人に対して性的な部位を強調したような撮影をすることも、性的自由の侵害になります。こういった内容も撮影罪として処罰できるようにすべきという方向性で検討されていました。しかし性的な部位や下着姿など線引きが難しいこともあり、今回は見送られたという経緯がありました。

現状は“条例違反”による検挙

――どこまでが盗撮行為として処罰の対象になるのか、線引きが困難なのですね。

線引きがとても難しいです。例えば、洋服の上から撮影した場合、どのような場合だと撮影罪になるのか。どんな場合はならないのか。判断が非常に難しくなります。

あまり厳しくしてしまうと、普通に街の風景を撮影したときにたまたま写り込んだ人がいた場合も撮影罪になってしまう可能性があります。それを犯罪者にするのか、という議論もありました。報道目的の場合はどうするのかなど憲法的な観点からも議論になったので、今回は刑法改正の中にそこまで盛り込むのは難しいという判断になりました。

残念ではありますが、現時点では“条例違反”で検挙されることになります。

――撮影罪は今後、どのようなブラッシュアップが必要ですか。

営利目的の場合は、もっと重い法律をつくる必要があると思います。また13歳以上16歳未満の子どもたちに対しては、年齢が5歳以上離れていないと、無条件に盗撮行為で性的姿態を取り締まることができないとなっています。年齢制限が本当に必要なのかどうかも、併せて議論する必要があると思います。

撮影自体は3年以下の懲役、または300万円以下の罰金となっています。インターネットに掲載するともっと重くなり、5年以下の懲役また500万円以下の罰金です。営利目的で行う人たちにとっては、この罰金は安いと思います。営利目的の場合、もっと多額の報酬を得ている場合があります。500万円を払って済むのであれば、500万円を払って終わらせてしまい、もっと稼ぎたいと思う人たちもいるかもしれません。

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