ブラザー工業が仕掛けた“同意なき買収”断念へ TOB価格を据え置き 守り切ったローランドDG

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ブラザー工業がローランドDGに仕掛けた買収

企業の広告制作などに使われる業務用のプリンター。特殊なインクを独自技術で吹きつけていきます。静岡県浜松市に本社があるローランドDG。産業用のプリンター製作を手掛けていて低溶剤のインクジェットプリンターでは、世界トップシェアです。

そのローランドDGに対して同意なき買収を仕掛けたのが、名古屋市に本社を置く民生用プリンターの大手ブラザー工業です。

今、この2社による「同意なき買収」をめぐってのやり取りが過熱しています。

「1株5035円で買います」ローランドDGの買収にアメリカの投資ファンドも参入

TOB(株式公開買い付け)の構図

ブラザー工業は、ローランドDGに対して、2023年9月と2024年2月、TOB(株式公開買い付け)を提案しています。

ブラザー工業はローランドDGに対して「買収をしたい」という意思を示していました。しかし、ローランドDGは「連携すれば今までの生産体制が維持できず減益になる」ということで、この提案について拒否していました。

この2回目の提案を拒否した直後、出てきたのがアメリカ投資ファンド「タイヨウ・パシフィック・パートナーズ」です。ローランドDGは、タイヨウと連携して自社の株を買い占め、株式を非上場化し経営権を取得しようという動きに乗り出しました。

ここからブラザー工業とローランドDGはある種の競争のような状態に入ります。2024年2月、タイヨウはローランドDGの株主に対して「1株5035円で買います」と宣言しました。

もちろんこれは当時のローランドDG株の株価よりも高い金額です。株主にとっても悪い話ではありません。

「1株5200円」と「1株5370円」 加熱するTOB成立の行方

ローランドDGの株価(5月9日終値)

ブラザー工業も黙ってはいません。

2024年3月、ブラザー工業はタイヨウよりも高く「1株5200円で買います」と買収に乗り出します。しかもローランドDG側の合意を得ていない「同意なき買収」です。

これに反発したタイヨウ側は4月、TOBの価格設定をブラザーよりも1株170円以上高い、5370円にして対抗しました。

この買収合戦に反応したのがマーケットです。4月25日に5330円だった株価は、タイヨウの買い付け価格の引き上げ方針が市場に伝わった26日から、ジリジリと上昇。

しかし9日の終値は前日から250円下げ5360円となりました。そして9日ブラザー工業は決算発表を行い、その中でこのような発言がありました。

ブラザー工業 佐々木一郎社長:
「ローランドDG株式会社に対する公開買い付けの価格を据え置くことを決定しました」

テレビ愛知の取材に対してブラザー工業の広報担当者は「TOBは事実上撤退か?」という問いに対し、「これ以上買い付け価格を上げる必要性がないと判断した」と答えました。事実上買収からの撤退ということになります。

アメリカ投資ファンド・タイヨウのTOB価格は5370円です。ローランドDGの株価は9日の終値で5360円とTOB価格を下回っています。

TOB成立となるのか注目が集まります。

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