給食の調理釜どうやって作る? 工場に潜入 豪快な機械作業と繊細な職人技で1枚の板が大きく深い釜に

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回転釜

愛知県岡崎市の知る人ぞ知る特産品は「回転釜」です。学校給食などで使われる「調理釜」として見覚えのある人は多いでしょう。ステンレスの板1枚から大きく深い釜が造り出されるその工程は、豪快な機械作業と繊細な職人技のオンパレード。工場をのぞいてみました。

ステンレスの板を丸く切断、「スピニング」技術も駆使

ステンレスの板を丸く切断する工程から始まる

岡崎市の老舗企業「服部工業」。その工場でつくられる回転釜の材料は、ステンレスの板です。ステンレスはサビにくく、耐熱性と強度に優れています。これをマシンにセット。缶切りのように切って丸い板に加工します。

新幹線やロケットの部品をつくるときにも用いられる「スピニング加工」という技術で、1枚の板を釜の形にしていきます。

職人技が発揮されるのは釜の底!

排水口の穴開けや溶接は職人仕事

ここで職人技の出番。作業を行うのは職人歴53年の森保均さんです。釜底に器具をセットし、コンパスのようなバーナーで底をまん丸に切断します。この穴は排水口ですが、穴を開けたり、補強する部品を溶接したりするのは職人の手作業でしかできません。

砥石のついた長いステッキで釜を磨く

排水口の取り付けが完了した釜は、工場の奥にある小さな部屋に運ばれます。ここで作業する職人は、防護服を着用。部屋の外から先端に砥石のついた長いステッキで釜をピカピカに磨くのです。

研磨の際に発生する細かい金属の粉は、吸い込むと肺を傷付ける恐れがあり、とっても危険。しかし、離れた場所からでも職人技でピカピカに磨けるんですね。お見事!

ガスコンロづくりは昔ながらの鋳物工場で

三重県の鋳物工場でガスコンロを製造

回転釜の中には、電気やガスの熱源を備えたものもあります。一番ポピュラーなのはガスコンロ。三重県いなべ市にある昔ながらの鋳物工場でつくられます。

鋳型を豪快に崩して部品を取り出す

材料の鉄を投入し、1500度の熱でドロドロに溶かしたら、鋳型に流し込んで冷やします。中身が固まったら、鋳型を斜めに滑り落とし、豪快に型を崩して取り出します。

コンロを叩いて青い炎にする燃焼試験

コンロをカナヅチで叩く

この後、キレイに磨かれたガスコンロのボディは岡崎市の服部工業に運ばれて、ガス管などが取り付けられます。ガス管とホースをつなげ、元栓をあけてキレイに火が付いたら合格! と思いきや……職人がカナヅチでコンロを叩き始めました。

実はこれ、燃焼試験の1つ。カナヅチで叩いて、中に溜まっている鉄粉を外に出し、コンロの火で焼いているんです。赤い炎が出ているうちは鉄粉が残っているので、炎が青くなったら終了です。

組み立ては「思いを紡いで形にしていく」仕事

工場で最年少の山本忠昌さん

最後は組み立て工程。回転釜は炎を外釜で覆う二重構造になっています。組み立てグループの1人は、この工場で最年少の山本忠昌さん。この春、高校を卒業したばかりの19歳です。

「工場見学に来て、いろんな釜を見て魅力的だと思った」と入社の動機を語る山本さん。「部品1つひとつに思いが込められていて、僕たちは組み立てだから、そういう思いを紡いで形にしていく」のが仕事のやりがいだそう。こんな頼もしい未来のエースもいる工場で、回転釜は生み出されていました。

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