「将来パンが買えなくなるかも」パン製造小売の倒産が増加 救世主は麺類用の小麦「きぬあかり」

経済 地域 くらし・生活 コラム・特集 話題 友だち追加

4月12日はパンの記念日。日本で初めてパンが焼けた日とのことで、パン食普及協議会が制定しました。ただ、物価高の影響でパン製造小売の倒産件数は過去最多となり、将来、パンが買えなくなる日が来るかもしれません。そんな未来を救うかもしれない小麦「きぬあかり」を取材しました。

パン製造小売の倒産件数は過去最多(東京商工リサーチ)

東京商工リサーチによると、昨年度のパン製造小売の倒産件数は37件と過去最多でした。背景にあるのは、物価高の影響です。原材料のバターや燃料費など、パンを製造するのにかかる費用は軒並み上がっています。

なかでも小麦の高騰は深刻。輸入に頼り切りってしまうと、そもそも原料が入ってこなくて困ったり、原材料費が高くなってパン製造小売の経営が厳しくなり、巡り巡って気軽にパンが買えなくなるという状況になりかねません。

だからといって、国内で小麦の需要を賄うことは難しい事情も。農林水産省によると、小麦の主な産地は乾燥地帯で湿気に弱い性質があり、雨が多く湿度の高い日本では育てにくい作物なんです。

愛知県産小麦「きぬあかり」が救世主に

喫茶店で「きぬあかり食パン」が好評

そこで救世主になるかもしれないのが、愛知県産小麦「きぬあかり」。本来、麺類や焼き菓子などに使われることが多い薄力粉ですが、近年パンの材料として取り入れるメーカーも増えています。理由はパンに地産地消の付加価値をつけたいと考える企業が増えているから。

実際にきぬあかりを使用している愛知県のパンメーカー・永楽堂に話を聞くと、本来、きぬあかりは焼き菓子に使われているため、耳の部分の焼き上がりがサクサクとした食感になり、味は小麦本来の香ばしさがしっかり感じられるため好評とのことです。

永楽堂が製造する「きぬあかり食パン」は県内の喫茶店やホテルで提供されています。こうした飲食店からは「県産小麦を使っている特別感がある」「お客さんとのコミュニケーションのきっかけとなる」といった声が聞かれ、付加価値につながっているそうです。

小麦の生産効率は北海道を抜き1位に

さらにきぬあかりは県が品種改良を重ね、これまでの小麦の弱点を克服しました。きぬあかりの特徴を愛知県園芸農産課に聞くと、通常の小麦に比べて穂の部分が長くなったため、収穫量が多いとのこと。また、湿気に強い品種に改良されたため、麦栽培に適さない環境でも「育てやすく収穫量も取れやすい小麦」となったということです。

このきぬあかりが誕生してから、県内の小麦の収穫量は順調に増えていて、最新の農林水産省の統計によると、小麦の生産効率を示す10アールあたりの収穫量のランキングでは、愛知県が北海道を抑えて1位となりました。

課題は安定供給

国産小麦と輸入小麦 助成金によって大きな価格差はない

国産小麦は輸入小麦で実はそれほど価格差はありません。輸入小麦の価格には国産小麦との価格差を減らすために国からの助成金が上乗せされていることが理由です。

そこで課題になるのが安定供給。これまで国産のものは輸入小麦と比べて供給量にばらつきがあるため、輸入小麦に頼らざるを得ない現状がありました。県の担当者は「安定供給を目指すことが安定した流通にも繋がるので、今後も作付面積を広げていきたい」と話しています。

きぬあかりは地産地消やパンの未来を守る一助になるかもしれません。

おすすめの記事

おすすめの記事

アクセスランキング

アクセスランキング

ページトップへページトップへ