「キャリアアップの意欲を持つべき」ブラジル人労働者が抱える問題 日本企業がサポートすべき課題も
近畿大学経営学部の教授の谷口智彦さんに、日本で働くブラジル人が抱える労働に関する問題について詳しく話を聞きました。
日本語の読み書きの能力向上が難しいという声
―――言葉の壁や食文化などで悩んでいるという声は上がっていますか。
私がさまざまな日系ブラジル人労働者の方にインタビューしたところ、特に出稼ぎの初期段階で日本語をうまく話せないという問題が出ているようです。
―――日本語が難しいという課題が変わらない現状としてあるのですね。
ただ、日本に慣れてくると日本語も少しずつ上達はします。しかし、読み書きの能力を向上させるのが難しいという声が届いています。
キャリアアップの意欲や企業側のサポートが必要
―――谷口さんが研究の結果から指摘をした2つの課題がありますね
1.日系ブラジル人はキャリアアップする意欲を持つべき
2.企業側の努力・サポート
―――「日系ブラジル人はキャリアアップする意欲を持つべき」こちらについて、教えてください。
働くには、「正社員あるいは管理者として昇進したい」という目標や意欲も必要となります。そこで、とある会社にアンケートを取ったところ、約60%の方はキャリアアップを目指していないという結果が出ています。
私の方でもアンケート調査を取ると「管理者に向いてない」「向いているかどうか分からない」という方が50%ほどいました。そもそもキャリアアップしたいという目標を掲げていないことに問題があるのではないかと思います。きちんと意欲を持っていくべきだと思います。
―――ただ、谷口さんの講演の内容にも「景気が良ければ働き口がある、なければ働き口がないというのも課題」と話がありました。その中で、言葉をしっかり学んだり、働く意欲を持ってキャリアアップを目指したりという意識は持てそうですか。
もちろん難しい面があると思います。そういったときに、企業側のサポートや企業側の努力も必要になってくると思います。
―――これがまさに2つ目に上げていただいたポイント「企業側の努力・サポート」ですね。
当然ながら企業の支援があると思いますが、日系ブラジル人の方がきちんと昇進できるような公正な制度があるということを周知して、浸透させていくことがすごく大事です。
―――企業側がさまざまな支援を行っていることが日系ブラジル人労働者のみなさんにあまり知れ渡っていないのですか。
それが「日本語の壁」の話と共通してきます。日本人は母国語なので制度についてよく理解できます。しかし、日系ブラジル人の方は日本語をよく分かっていないので、そういう制度や仕組みがあること自体も理解できないというケースもあります。
―――企業のサポートの1つに、日本語だけでなく英語など他言語で説明することも大事かもしれませんね。
私が調査した企業の中には、経営理念や制度の仕組みをポルトガル語表記で冊子にして説明するように工夫しているところもあります。