親の介護「すべて拒絶されて煮詰まる」 要介護5の場合「ほとんど終日介護」6割以上 家族介護の実情

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「そんなもん、食べれんがな」働きかけを拒絶

母親の英子さんを介護

この日、てとりんハウスを利用する1人の男性を取材しました。母親の介護をしている平木敬二さん(67)です。週2回のデイサービス以外は、自宅で介護をしています。

母親の英子さん(91)は8年前に肺炎で入院しました。現在は介助なしで日常生活を送ることができないとされる「要介護5」の認定を受けています。

平木敬二さん:
「これまで母は、子どもと夫のためだけに生きてきました。できるだけ今を楽しんでほしいな、と。息子の勝手な思いです」

英子さんに食べてもらえる献立を考えて食事をつくる敬二さん。ベッドに持って行きますが「そんなもん、食べれんがな。もう、いらん。向こうへ持って行け」と突っぱねられてしまいます。自身のご飯は後回しにして、英子さんの介護に付きっきり。その後、デイサービスに送り届け、自らは食材や日用品の買い出しに向かいました。

【映像を見る】介護するあなたを支えたい ドキュメンタリー「家族、だから苦しい 」

平木敬二さん

敬二さん:
「介護そのものは親の人生に関わること。自分が後悔しないように一生懸命やっています。本当につらいことがあっても、親の前では弱音を吐けません。

母に働きかけを全部拒絶されて、煮詰まってしまうこともある。どんどん変わっていく親を受け入れてあげないといけないのに、まだ心の準備ができていないんです。それは自分が強くならなきゃいけないのかな、と思います」

ケアラー自身の生活環境を把握する難しさ

介護に疲弊

2022年の国民生活基礎調査によりますと、同居の家族が要介護5の場合「ほとんど終日介護をしている」という人の割合が63.1%と、6割を超えています。

介護者が何を抱え、どう支援すべきか。その把握の難しさを感じた、ある事件がありました。2023年8月に、千葉県の介護者支援カフェを利用していた50代の女性が自ら命を絶ってしまったのです。女性は在宅で認知症の母親の介護をしていました。

岩月さん「ケアマネージャーに介護者支援を落とし込む」

自分たちの活動だけでは限界がある。そこで岩月さんを含めた介護者支援のネットワークは、国に介護者を専門で支援する人材の育成や、地域の支援団体の活動への助成を求めています。また、より近くにいるケアマネージャーや社会福祉協議会の担当者にもサポートしてもらえるよう、積極的に働きかけます。

岩月さん:
「ケアマネージャーに介護者支援を落とし込んでいく。介護者支援の一環としてすごく大事なことです」

「親が生きている間に、もっとできたことがあった」

てとりんハウスのイベント

「老老介護」「働きながらの介護」「大人に代わっての介護」。心身ともに疲弊する介護者を少しでも癒そうと、てとりんハウスでは月の半分以上の日でイベントを開催しています。介護する人も、される人も、介護に関係ない人だって参加は自由です。

岩月さん:
「介護と関係ないことなのに、という人が関わってくれると、介護者もそこで社会とつながりを持てます」

親が生きているうちに、もっとできたことがあったはず――。今なお、岩月さんの心に残る介護の後悔。だからこそ、てとりんハウスに来る人たちには少しでも納得のできる家族との時間の過ごし方をしてほしいと、真摯に語ります。

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