世界遺産や高層ビルに使われている「腐らない木材」 驚きの独自加工技術に迫る

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木造の高層ビルや世界遺産を支える「腐らない木材」をつくる木材メーカーが福岡にありました。CO2削減に向けて関心を集める木造建築を後押しする独自の技術に密着します。

木材を使った高層ビル

横浜にある11階建てのビル。柱や梁など、ビルを支える構造が全てが木でできた日本初の高層ビルです。CO2の削減に向けて今、木を使った建物が関心を集めています。

気になるのが雨や風にさらされ、傷むこと。ビルの外壁には、ある特殊な木材が使われています。サミットで各国首脳が訪れた広島の世界文化遺産「厳島神社」の、水に漬かるような腐りやすい部分にも同じ木材が使われています。

この「エコアコールウッド」と名付けた木材は、少なくとも20年は割れにくいといいます。いったいなぜでしょうか。

薬剤が染みてしっとりとした木材

福岡県筑後市にある九州木材工業。長さ9メートルの円筒形の装置に入っていくのは、森林の整備のために伐採したスギの間伐材です。秘密は液体の樹脂系の薬剤。圧力をかけて、木材に4時間染み込ませます。

通常の加工では、虫を防ぐ薬剤を加えますが、毒性のない樹脂系の薬剤をスギやヒノキの細胞壁に注入し、薬剤が固まることで木材そのものを堅くするのです。

装置から出てきた木材は、薬剤が染みてしっとりとしています。その後、乾燥させるとどのようになるでしょうか。

張りがあって響く音がする「エコアコールウッド」

九州木材工業 製造グループ 藤木孝文さん:
「見た目は素材のそのままの色が出ていますが、実際は堅いので、たたいてもらったらその違いを感じてもらえます」

実際に木を手でたたいてみると、「エコアコールウッド」の方は張りがあって響く音がします。これが堅さの違いですね!

圧力のかけ方や温度管理に独自の工夫があります。防腐加工を施した一般の木材より、価格は約3割高いですが、堅さは7割増しました。

「愛知万博」が転機に

九州木材工業の創業は1930年。木の電柱を作っていました。毒性のなく、耐久性を高める薬剤を探していたところ、福岡県と九州大学との連携し、わずか1年で開発に成功。ただ、なじみのない商品で全く売れません。

そこに転機が訪れます。

九州木材工業 角 博社長
「『愛知万博』がありましたでしょ。名古屋で。ものすごく大量に使ってもらったんです」

万博に使う建築資材は再利用が前提。時間が経過しても、風合いや寸法が変わらないとして採用されたのです。

公共施設や小学校、中学校などを木造化することが大事

角社長:
「カーボンニュートラルの達成には、木材、森林の吸収源を使わなければ難しいです。公共施設や小学校、中学校、学校、幼稚園。住宅ではない施設にビルを木造化していくことが大事だと思います」

エコアコールウッドの売り上げは、この10年で約5倍に伸びました。ベンチやウッドデッキだけでなく、建物での利用が広がっています。

日本経済新聞社 橋爪 洸我記者:
2050年までのカーボンニュートラル実現のため、政府は法改正によって民間施設でも木材を活用できるように後押ししています。課題はコスト面です。耐用年数が短く、ランニングコストもかかるため、今後の技術革新がカギになります。

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