海底に眠る「幻の名古屋市電」半世紀ぶりに田原市で発見 市電愛好家や船主と挑んだロマンあふれる海底調査
約半世紀のときを経て、海底の終着駅で眠っていた「幻の名古屋市電」の姿が発見されました。
今回発見されたのは、かつて名古屋市民の足として親しまれていた名古屋市電。最盛期には100キロ以上の路線があった名古屋市電ですが、高度経済成長に伴う自動車の増加と地下鉄の整備が進められたことに伴って、1960年代より段階的に縮小。1974年には全線が廃止となりました。
役目を終えた名古屋市電の車両の一部が最後に向かったのが、田原市沖の海底。海の底に市電を沈めて、魚礁として利用することが計画され、実際に80両ほどの車両が海底へと沈められたそうです。
たどり着いた先は「田原市沖」の海底
つり革もつけられたまま沈められ「海底の終着駅」へと向かった名古屋市電の車両。沈められる際の写真や映像は残っているものの、具体的な場所などを示した資料はほとんど残っておらず、いつしか人々の記憶からも忘れられていきました。
そんな「幻の名古屋市電」の姿を探していたのが、名古屋市電の愛好家である櫻井さん。自身でも本物の名古屋市電の車両を1両所有しているという櫻井さんは、愛知県の公文書館で海底に沈めた場所が記されている資料を2年前に発見。ダイバーや水中ドローン、漁船などを手配して個人で海底調査することも検討されていたそうです。
そこで今回、櫻井さんが持つ貴重な資料を頼りに調査を実施。しかし、名古屋市電が沈んでいるとされる海域に近い赤羽根漁港の漁師から聞かれたのは「既にバラバラになって魚群探知機にも映らない」という声。専門家からも「サビによる腐食とこの海域特有の速い潮流のために跡形も無くなっているであろう」と厳しい見解が示されます。