滝山病院暴行事件から考える精神科医療 愛知県の病院は在宅患者訪問に尽力、院長「診療報酬は高くない」

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退院後に在宅でケア「ACTあいち」

愛知県精神医療センター「ACTあいち」

愛知県精神医療センターでは、10年前に129人いた入院1年以上の患者数は、2022年度には40人にまで減少しました。長期入院患者を減らした理由には、特別なチームの存在がありました。それが「ACTあいち」です。今回は、ACTあいちに密着しました。

訪れたのは統合失調症で長い期間入退院を繰り返し、4か月前に退院した40代・男性患者の自宅です。ACTあいちは、在宅で患者を診ることを専門にしています。

病状の悪化を防ぐために患者を訪問

在宅で患者をサポート

精神科に長く入院している患者は、社会活動から切り離され、自立が難しくなります。その結果、病状が悪化するという悪循環に陥ってしまいます。

患者にとって、地域で診た方がより良い治療となるのです。ACTあいちのメンバーと患者同士、体調の具合や最近見た野球の話などをして和やかな雰囲気で会話を交わします。

ACTあいちのメンバー「もう何か月経ちます? 退院されて」
患者「もう4か月かな。4か月過ぎたね。もう入院は絶対したくない」
ACTあいちのメンバー「分かりました。なるべく入院しないようにお手伝いできることあれば。がんばってますからね」

40代・男性患者の声

この特別チームは、医師と看護師3人、精神保健福祉士、作業療法士の6人で構成されています。それぞれの専門的な視点から在宅で患者を支えていました。

◆愛知県精神医療センター 高木 宏院長
「多くの病院では入院していてもおかしくないような人たちを診ているので、なくてはならない存在です」

在宅で診てもらうことに対して、患者はどう感じているのか聞いてみました。

◆40代・男性患者
「精神的に違いますね。病院のスタッフなので入院中に診てもらっていた人なので。来るか来ないかで身が引き締まるというか、しっかりしないといけないと思います」

診療報酬が少ない問題が浮き彫りに

相原啓介弁護士

しかし、在宅医療を重視する取り組みには、人手の確保に加えて、ある問題が浮彫りになっていました。

◆高木院長
「退院してACTをやっても、診療報酬は高くありません。地域で患者を診ていくための診療報酬をしっかり手当てしてもらいたいです。ACTとしてやっていくには、経済的に難しい面があります」

つまり、在宅での診療報酬は低く、人出もかかるので入院したほうが診療報酬が高いのです。患者を支援する相原啓介弁護士にも話を聞きました。

◆相原啓介弁護士
「地域の福祉関係者であるとか医療関係者にとって、お金が入る仕組みになっているわけではなくて、どちらかと言えば入院させていたほうがお金が入る仕組みになっている問題はあるだろうなと思います」

地域で患者を診るという精神科医療の理想に、診療報酬の制度が追いついていない現実が浮き彫りになってきました。

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