ダイヤモンド・プリンセス号、新型コロナ感染者受け入れに迷いはなかった 藤田学園理事長を支えた「愚直」
藤田医科大学をはじめ、5つの医療施設を運営する藤田学園。理事長の星長清隆さんは、「独創一理」の理念のもと、医療の発展に努めてきました。そんな星長さんの人生を支えた一冊が「愚直に実行せよ! 人と組織を動かすリーダー論」です。
星長清隆さん:
「『愚直』という言葉が響きましたね。私自身、自分のできることをとにかく愚直に何度も実行します。購入した当時から今に至るまで、この『愚直に実行しろ』というのが自分を支えてくれた言葉です」
――なぜこの本を読み始めたのですか。
私が副院長に指名された2006年に、リーダーとは何かを勉強したくてこの本を手に取りました。まずは「志を持て」。リーダーとして何がやりたいのかを、この本で問われました。私の立場では正しい医療を国民の皆さんに届けたい。もっと大きく言えば、世界中に届けたいという大きな希望があります。そして説明できるビジョンを持て、というのも学びました。実行可能なビジョンでなければいけない。なぜこのビジョンなのか、説明できなければいけません。「愚直に実行せよ!」を読んで、リーダーについて1から考え直しましたね。
――星長さん自身が愚直に実行してきたことは何ですか。
藤田医科大学はどこに向かって進んでいるのか、皆さんに直接説明することです。自分たちが進めた「藤田丸」という船を前へ進めなくてはいけないので、なかなか進まないことがあっても、現場に行って直接指導や意見をして理解してもらいます。
この本にも書いてありますが、正しいことと悪いことを選択するのは簡単です。ただ、さまざまな意見があってどれかを選択するときに、リーダーの考えが影響します。正しいことを選択する判断基準として、「自分がコミットしている共同体の中で、最も根源的なものを見つめよう」と本には書いてあります。大学の創設者の意図、夢があるので、そこは大事にしなくてはいけないと感じました。
ダイヤモンド・プリンセス号 患者受け入れに「迷いはなかった」
――星長さんが考える“根源的なもの”について教えてください。
とにかく患者さんには優しく対応しよう、患者さんの立場を一番に考えて行動せよ、という指針です。「For The Patient」、患者さんのために。さらに「For The Public」、社会のために。そして「For The Colleagues」、仲間のために。私が常々、皆さんに伝える3つの言葉です。
2020年に「ダイヤモンド・プリンセス号」で新型コロナウイルスに感染した患者さんを受け入れました。当時、患者さんを収容できる施設を作ったばかり。開業までに1カ月半ほどあって、場所が空いていたんです。受け入れの判断に迷いはありませんでした。幹部職員1人1人に電話をして確認しましたが、誰1人やめましょうという人はいませんでしたね。
学生たちには、患者さんのためには自分で犠牲になることもあると教えています。我々が断ったら、今までの理念は何だったのか、と。