企業が学生の奨学金を肩代わり 早期退職を回避する試み 人材確保や定着につなげて企業イメージアップへ

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500校以上の大学を取材された大学ジャーナリストの石渡嶺司さんに話を聞きます。

進む少子化 学生に対してどのように魅力を伝えるのか

大学の学費(1年間)

――企業が奨学金を肩代わりする制度を導入していますね。人材定着や人材確保のためなのでしょうか。

現在、学生が有利の売り手市場がずっと続いています。この水準はバブル期とほぼ同じです。少子化も進んでいるので、企業は学生に対してどのように魅力をアピールするか。その一環として奨学金の支援制度を導入しているので、非常に効果のある制度といえます。

――実際に人材の確保や定着につながっていますか。

この奨学金支援の制度を導入した企業に何社か取材しました。各社とも人材の定着につながっていたり、企業のイメージが良くなったり。メリットが多いといいます。それがほかの企業にも広がり、導入企業が相次いでいる状況です。

1カ月1万円程度の奨学金支援で定着が期待できる

奨学金支援で人材定着を

――奨学金の借入総額の平均は324万3000円です。企業は数人、数十人あるいは数百人分を返済すると、かなりの金額になりますよね。負荷にはならないのでしょうか。

確かに大きな金額ですが、気にしない企業が多いようです。例えば毎年30人を採用している企業が、1人当たり総額100万円の支援制度を導入するとします。その規模は3000万円程度です。ただ、新卒採用にかかる費用は内定者研修なども含めると、1人当たり1000万円を軽く超えるといわれています。

お金をかけて早期に離職されると、かけた費用の500万円や1000万円などが無駄になってしまう。それを考えれば、人材の定着につながる奨学金返還の支援制度を導入するのは“安い買い物”と考える企業が多い印象です。

――その一方で、奨学金を使わず進学や就職した人からすれば「なぜあの人だけ」と不公平感は生まれませんか。

それは否定できません。導入をためらう企業に取材すると、奨学金を利用しなかった社員との不公平感やコストを気にする企業が多数あります。奨学金を利用した社員が一定数いる中で、人材の定着につながるように長い目で考えることが重要です。会社の福利厚生として支援策を導入することで、奨学金を利用していない人にとっても「メリットに感じる」と考える会社員が多いようです。

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