火の粉降り注ぐ「手筒花火」 初挑戦の祭り男はソワソワ… 手筒は自身で製作、豊橋伝統の祭礼に密着
毎年7月に行われる豊橋祇園祭は五穀豊穣などを祈願する吉田神社の例祭。大きな筒を抱えたまま激しく火花を拭き上げる勇壮果敢な「手筒花火」の祭りとして全国的にも知られています。
豊橋が発祥の地といわれ、徳川家康が奨励したとの説もある手筒花火。豊橋の男衆にとっては、1年に1度の大切なイベントです。祭事の時期が近づくと仕事そっちのけでソワソワしてしまうのだとか! 特に2023年は4年ぶりの通常開催なので、喫茶店に集まる男衆のソワソワ度もMAXです。
手筒花火は自作
豊橋手筒花火の最大の特徴は「花火を自らの手で作り上げること」。筒の本体となる竹を選んで切り出すのも、手筒花火を掲げる人が行います。竹は目で見るだけでなく耳で音を聞き分けながら探すのだとか。まん丸で厚みがあり、なおかつ真っ直ぐな三拍子そろった竹を見極めます。
選ぶ、切る、運ぶを繰り返し行う
1本の竹から切り出せるのはわずか手筒3本分。メンバー全員分の竹がそろうまで「選ぶ→切る→運ぶ」を繰り返すという、なかなかの重労働です。ちなみに手筒花火が盛んな東三河では手筒に適した良質の竹は取り合いになってしまうため、竹を切り出す竹やぶの場所も口外厳禁なんだそうです。
新人には最も良質な竹を割り当てることも、豊橋手筒花火の習わし。事故の確率が少しでも低くなるよう、先輩たちが最も良質の竹を選んで新人に譲るのが長年受け継がれてきた伝統の1つです。
自分が使う竹が決まったら、仕上げまでは全て自己管理。長い柄のついた専用のやすりで竹の節を抜きます。このとき、一番底の節が割れたら一発アウト。わずか30秒の燃焼時間のために、何日もかけて慎重に準備を進めます。
節を抜いた竹に麻布を巻き付けて縄でグルグルと固めると、手筒花火らしい姿に。多くは機械で巻くところを、新人は機械を使わずに手巻きで行うのも昔からの伝統です。重さ9キログラムにもなる筒に手作業でギチギチに縄を巻いていくのは、想像以上に大変な作業です。
本番前の試し打ちで正しい姿勢を身につける
本番の10日前に行われるのが試し打ち。顔の真横で火花が吹き上がり、最後にズドンと激しく打ち抜ける手筒花火の姿を目の当たりにし、新人メンバーに緊張感が漂います。
それでも予備を作ることができない手筒花火はリハーサルなしの一発本番。火薬なしでもしっかりと支えられるように、繰り返し練習して正しい保持姿勢を身につけます。