月で農業を可能に 名古屋大学発ベンチャーのリアル宇宙兄弟が開発 「炭」で野菜を栽培?

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人類が再び月を目指す「アルテミス計画」。将来実現するかもしれない月面での生活で、課題となるのが食料の確保です。そんな課題の解決に向けて、宇宙で野菜の栽培を目指す愛知県の企業を取材しました。

宙炭

月での農業を目指す企業が、愛知県刈谷市に名古屋大学発のスタートアップ企業「TOWING」です。宇宙での農業を目標に、社長の西田宏平さんと弟の亮也さんの西田兄弟が中心となり2020年に立ち上げました。

西田宏平さん:
「研究は彼が引っ張っていて、私はどちらかというとチーム作りやビジネスの方をやっています。今のところは順調に進んでいます」

月での農業をどう実現させるのか、野菜が栽培されているビニールハウスを訪れると、そこで見せてもらったのは真っ黒な土? これが「宙炭(そらたん)」です。

もみ殻などを加熱して作った炭を利用

彼らが研究・開発しているのが、この「宙炭」。もみ殻などを加熱して作った炭を利用しています。野菜が生育するには、土と栄養となる有機物が必要ですが、野菜は有機物の中から栄養素を直接取り込むことはできません。そこで活躍するのが微生物です。微生物が有機物を栄養素に分解することで、野菜は栄養素を吸収できるようになります。

より農業に適した土壌を作り出すことに成功

こうした野菜が育つ環境をより強化したものが、人工土壌の「宙炭」なのです。材料の炭には目に見えない大量の穴があり、そこに微生物をくっつけて培養させることで、より農業に適した土壌を作り出すことに成功しました。

宏平さん:
「微生物が培養できていない状態だと上手に作物が作れないので、上手に培養させてあげる手法の開発をしています」

宙炭は1か月で良い土壌に

この「宙炭」を農地の土に混ぜて使うと、微生物が有機物を効率よく分解。畑に適した土壌を作るためには、通常3年から5年かかるといわれていますが、それが約1か月に短縮でき、野菜の収穫量が約20%アップしたという実験結果も出ています。

「TOWING」が「宙炭」を商品化したのは2022年の10月。今後は国内だけでなく、海外での展開も見据えています。

宏平さん:
「ようやく、今のタイミングで事業が出来上がってきてこれから拡販期という形なので、なんとか来期1億円以上の売上達成。2025年には5億円くらいの達成と伸ばしていきたいと考えています」

月の砂で栽培

そして「宙炭」の性質を応用したのが宇宙での栽培。粒が細かすぎて微生物が生存できないといわれている月の砂でも、野菜を育てられるというのです。2022年には、実際にゼネコン大手の大林組との共同開発で、月の模擬砂を加工して小松菜の栽培に成功しました。

模擬砂で野菜の栽培に成功

亮也さん:
「月の特性は複雑で、いろいろ粒の条件を変えたり、作り方を変えたりして今ブラッシュアップしていて、ようやく栽培がうまくできるまで持ってくることができました」

兄弟で目指す宇宙農業。今後は火星での栽培も目指し研究を進めます。

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