嬉野温泉の老舗温泉旅館の宴会場に多くの外国人 団体旅行で使われなくなった宴会場を日本語学校に 佐賀県
企業などの団体旅行が減る中、佐賀県嬉野市の老舗温泉旅館が着目したのは、使われることが減った宴会場です。働き手の確保と旅館再生を狙った新たな取り組みを取材しました。
「日本三大美肌の湯」である佐賀県の嬉野温泉。街を歩く外国人の若者。向かう先は、嬉野温泉を代表する老舗旅館「和多屋別荘」です。しかし若者たちは裏口から旅館へ。実は旅館が日本語学校になっていて、従業員ではなく生徒なんです。
老舗旅館に日本語学校が入居
東京の日本語学校が入居して、2025年から授業をスタート。日本語学校の多くが都市部に集中する中、地方の旅館に開校するのは非常に珍しいケースです。
教室は宴会場をリフォーム。高度経済成長期は団体旅行や社員旅行で必要不可欠だった宴会場ですが不要になり、賃料を稼ぐ方針に転換しました。
入学したのはネパール人やパキスタン人など約40人、2年間学びます。授業が終わり、次に入ってきたのはクラス担任の講師。アルバイトの説明を行います。就労は原則週28時間までなど、法律、規制に関するレクチャーもあるのです。
旅館や農家などでアルバイトをしながら日本語を学ぶ
挨拶の仕方や時間を守ることなど、マナー指導も。生徒は旅館や農家などでアルバイトをしながら日本語を学びます。
ICA国際会話学院 中野浩子校長:
「嬉野の地盤をきちんと固められるような人材に育ってくれればいいなと思っています」
首都圏のIT企業など13社を誘致
人手不足に悩む嬉野温泉の旅館は、こうした生徒の卒業後の働き手として期待しています。ほかにも、和多屋別荘はニーズの変化に合わせて改装を進めてきました。2020年には客室をオフィスに転換、首都圏のIT企業など13社を誘致しています。
日本語学校の設立は、入居企業からの提案が発端でした。
和多屋別荘 小原嘉元社長:
「IT人材を育てるために、日本語を学んでもらい排出するという相談を受けたときに、『観光人材のほうがもっと不足しています』と。学校ごとつくることを決めました」
入居企業から生まれたビジネスアイデアはほかにもあります。本社が東京にあるシステム開発会社「D&S」。宿泊者が館内の各店舗で買い物した料金を、宿泊料と一緒に精算できるシステムを開発しました。
客の増加に伴い、1950年の創業から約30年をかけて、建物の増築を重ねた和多屋別荘。時代の変化に合わせた大胆な用途変更で収益性の向上を図っています。
日本経済新聞社 長谷川聖子支局長:
「景色の良い食堂や露天風呂など旅館ならではの施設を新たな発想で利活用する取り組みは旅館の経営再建のみならず地域の活性化にも一石を投じる試みとして注目です」