ガソリン車はいずれEVに「40年前のコストで掘れた石油はもう掘れない」と専門家…でも充電場所が少ない
池田さん:
「エンジンを電動化時代に適合させることが非常に重要。電池はエネルギー容量が小さいので、空力を良くして燃費効率を上げなくてはいけない。このハイブリッド車用エンジンは、高さをすごく減らして設計されています。
まずは燃費効率を上げて、CO2をリデュースすること、減らしていくことを考えているのが今の状況です」
各メーカーのエンジン開発を目の前で体験した池田さんは「EVも燃料電池車も、今はエンジンには勝てない」との見解を示しました。
EVの最大の課題は航続距離の短さ
しかしエネルギーアナリストの大場さんが警鐘を鳴らすように、石油の採掘コストは上昇し続け、ガソリン価格も上がる一方。少しでもガソリンの消費量を減らすには、EVの普及が必要とも思えますが…課題となるのがEVの航続距離です。
航続距離にかかわってくるのが「エネルギー密度」。「エネルギー密度」とは、物質が重量・体積当たりで蓄えることができるエネルギー量のことです。リチウムイオン電池が1kg当たり100Whに対して、ガソリン・軽油は1kg当たり1万2000Whです。
国立環境研究所の試算(2010年)によると、それぞれ10kgだった場合の航続距離は、リチウムイオン電池が5km、ガソリンは150km以上と30倍です。
さらに重さ約1500kgのクルマが100kmに進むためには、リチウムイオン電池が200kg必要なのに対し、ガソリンは6.4kgとかなりの差があります。
国内にEVを充電する設備が整えば使えるかも
航続距離では不利なEVですが、大場さんはさまざまな場所にEVを充電できる環境が整えば、問題なく使えるようになるかもしれないと話します。
「集合住宅に充電設備がなく、使える環境が整っていないのが現状ですが、自宅で充電できる環境があれば、必ずしも航続距離が長くなくても、結構使えるかもしれません」
●大場紀章(おおば・のりあき)エネルギーアナリスト
愛知県江南市出身。ポスト石油戦略研究所代表。専門は化石燃料供給、エネルギー安全保障問題など。
●池田直渡(いけだ・なおと)自動車評論家
神奈川県生まれ。出版社勤務を経て独立。クルマのメカニズムと開発思想・社会情勢・法規制などの結びつきに着目し、各誌で執筆中。
(2025年3月29日放送「クルマとミライ増刊号 エンジンが教えてくれた 脱炭素、本当の敵は…」より)