北海道で自生する「シラカバ」がウシの飼料に 蒸し煮にしてウシが大好きな甘いエサに大変身
北海道でよく目にする「あるもの」を原料にした牛のエサが畜産農家の間で注目されています。牛が健康になる餌。その餌を造っているのは意外な業種の企業です。
北海道北見市の牧場では、1200頭の牛に特別な餌が与えられています。この餌は、オリゴ糖が多く含まれ、牛がよく食べます。また、繊維の量も豊富で、内臓の調子が良くなるとされています。
この餌を食べた牛は、肉の量が20キロ増え、価格が5%上がったというデータもあり、農家の経営改善にもつながっているんです。
未来ファーム 中野克巳社長:
「地元の自然の原料を使っているので安心安全です」
廃棄物収集会社が新事業に挑む背景
この特別な餌を製造しているのは廃棄物収集の会社、エース・クリーンです。新規事業として始めた餌づくりの原料はシラカバのチップ。材質が軟らかく、木材としてはあまり利用されず、比較的安く仕入れることができます。シラカバチップから作る餌は1キロ60円程度で、輸入飼料に比べて2割ほど安く、畜産農家から注目されています。
シラカバチップを使った餌の製造過程
シラカバチップを餌に変えるのは、巨大な圧力釜です。シラカバチップを釜に入れ、高温高圧の水蒸気で加水分解する「蒸煮(じょうしゃ)」という技術を使用しています。社員は気温や天候で変わる味や硬さを毎回確認し、微妙な変化にも対応しています。
エース・クリーン 稲川昌志常務:
「牛って人間より味覚が5倍、嗅覚も同じくらい鋭いんです。人間はあんまり甘み感じないけど、牛はたぶん奥に感じているんですかね」
最初は牛が食べてくれませんでしたが、温度や圧力を変えて試行錯誤。林産試験場や雪印種苗、帯広畜産大学と共同で研究し、2017年に商品化に成功しました。
環境面での評価と今後の展望
日本経済新聞社 浜野琴星記者:
「この餌を食べた牛のゲップに含まれるメタンが減った、という検証結果が出ています。河川などで定期的に伐採されるヤナギの利用も進められていて、SDGsの観点でも注目されています」
木を原料にした餌の販売量は年間3000トンに増加し、売り上げも2億円に迫っています。
エース・クリーン 中井真太郎社長:
「全国にもポテンシャルの高い資源というのはあるかと思いますので、将来的にはそういうものも飼料化していくためにも、我々のこの『蒸煮』という(技術を使って)広く普及していきたいです」