学生優位の「売り手市場」 仕事内容や実態を隠さず提示する企業が必要人材の確保が可能に
売り手市場の採用活動の中で、企業はどう立ちむかうべきなのか。中日BIZナビ編集部の上井啓太郎記者に話を聞いていきます。
就職情報会社「リクルート」の調査によると、この3月に卒業する学生の就職率は91.7%で過去最高を記録しました。10年ほど前からの推移を見ても上昇し続けています。
学生の「売り手市場」が続く中、企業側は人材確保に苦労しているといえます。一方で、人材の確保に成功している企業を取材しました。
採用活動はあえて“対面”に
まずは津島市の「TDEC」の取り組みです。自動車部品を作る金型の製造会社ですが、他社がウェブ上での選考に舵を切る中、TDECではすべての採用活動を対面で実施することにこだわりました。エントリーシート提出はウェブ上ですが、それ以降はあえて対面で行っています。
さらに学生向けインターンシップも、実際の職場で金型など設計システムCADを使って金型の設計や紙やすりを使った仕上げ作業など、仕事を具体的に体験してもらっています。「この会社なら8時間仕事ができる」と感じてもらった人を採用することで、入社後の離職率「0」につながっています。
「Gの卵が…」「生活排水の10倍ほど汚い」きつくて汚い面を強調
次は下水処理施設の維持管理などを行う名古屋市南区の「エステム」です。エステムの採用ページをみてみると、「マンホールの中に小豆がたくさんあると思ったら、ゴキブリの卵だった」「航空機の汚水は普通の生活排水の10倍ほど汚い」など仕事上の体験談が書いてあります。
エステムでは6年前から、業務のきつくて汚い面をあえて強調する内容に変更しました。
エステム 人事部長 野間口博史さん:
「入ってみて、こんなはずじゃなかったと思われるのが一番不幸だと思うので。それでも、地球環境を守りたいとか、人々の生活を守りたい人は少なからずいるのかなと思って」
離職者、毎年2人ほど→0~1人に減少
こうした取り組みの結果、毎年20人ほどの新卒社員を採用できるように。しかも入社1年未満での離職者が毎年2人以上いたのが、0から1人程度に減るなどの好影響が出ています。
エステム 西村侑紀さん:
「臭いというのをすごく言われていましたが、実際働いてみると外にある施設ということもあってにおいも思ったよりは気になりません。辞めるつもりはないのでずっと働けたらいいかなと思います」
エステム 野口悠生さん:
「確かに汚い部分もあるかなと思いますが、人々の生活を支えるという気持ちが面白そうだったので、携わりたいなと思いました。機械の異常を素早く察知して大事にならないといったときにやりがいを感じています」