ブラザー工業が聴覚障害者のための「音声認識アプリ」開発 音声を素早く文字に変換 スムーズな会話可能
いま、障害者雇用を積極的に進める企業が増えています。名古屋の電子機器大手、ブラザー工業が、AIを使った独自の音声認識アプリを開発し、聴覚に障害がある従業員の生産性の向上につなげています。
音声認識アプリの開発背景
ブラザー工業では、聴覚障害者のための音声認識アプリを開発するチームが立ち上げられました。メンバーの1人である総合デザイン部の鈴木優人さんは、生まれつき聴覚に障害があります。鈴木さんは「世の中にないツールなので、わかりやすくなるように工夫しました」と語ります。
このアプリは、鈴木さんの発言を約2秒で文字に変換します。質問に対しても画面を見ながらスムーズに答えることができます。手話などを使っている人もいますが、口で話す方が便利で早いという聴覚障害者も多いです。このアプリにより、オンライン会議も問題なくこなせるようになり、仕事の幅が広がりました。
企業の障害者雇用促進への取り組み
障害者雇用促進法が企業に求める法定雇用率は2.5%ですが、2026年7月には2.7%まで引き上げられます。しかし、達成している企業は全体の半数以下です。
愛知県労働局職業対策課 神谷しのぶ課長:
「企業が障害者雇用に対するノウハウを持っていないことが課題。企業側と障害者側がよく話し合って、どんなところに配慮が必要なのかはっきりさせたうえで雇用するのが大事です」
開発の課題と解決策
2001年に入社した鈴木さんは、総合デザイン部に配属されましたが、課題はコミュニケーションでした。会社側もサポート方法を探しましたが、聴覚障害者の発話を支援するものは見つかりませんでした。そこで開発されたのが独自の音声認識アプリです。
しかし、発話の程度が個々で異なるため、1人ひとりの音声データをAIに学習させ、アプリの音声認識機能をそれぞれの話し方の特徴に対応できるようにしました。
2025年度中の商品化を目指して
ブラザー工業では、社内外の約30人にモニター調査を実施し、アプリの音声認識の精度や速度の向上に取り組んでいます。2025年度中の商品化を目指しており、ろう学校など教育機関にも広げていけるよう考えています。
日本経済新聞社 長縄礼香記者:
「障害者雇用促進法では、企業に障害者の雇用の質の向上も求めていて、今後ますます障害者の雇用に力を入れる企業が増えるとみられています。このためブラザー工業では現在、社内外の約30人にモニター調査を実施。アプリの音声認識の精度や速度の向上に取り組み、2025年度中の商品化を目指しています」