エネルギーの未来を変える世界初の「電力の運搬船」を実現へ 蓄電池のスタートアップが挑む再エネ

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東京のスタートアップ企業が岡山県内に作った工場。作られているのは”特別な蓄電池”です。世界に先駆けて進められている“エネルギーの未来を変えるプロジェクト”に迫ります。

再生可能エネルギー普及のカギ「蓄電池」

2040年度 電源構成の4~5割を再エネに

国は2040年度をめどに、発電する電力の「半分」を再生可能エネルギーにする方針を打ち出しています。一方、発電量が天候に左右されるという課題があります。蓄電池は発電量が増えたときに電気を蓄え、必要なときに放出できるため、再生エネルギーの無駄をなくす役割を果たします。

しかし、蓄電池市場は中国などの海外メーカーがリードしています。そこでパワーエックスでは未来を見据えて国内生産に挑戦。世界初の「電気運搬船」の導入を推し進めています。

世界初の電気運搬船に挑戦

電気運搬船

電気運搬船は、洋上風力発電でつくられた電力を、海底ケーブルを整備するよりもコストや時間を抑えて届けることが期待されています。電気運搬船の導入により、再生可能エネルギーの有効活用が進むとされています。

PowerX Manufacturing上戸翔太さん

PowerX Manufacturing上戸翔太さん:
「船の上で万が一、電池から火が出るようなことがあれば当然、乗組員の方は逃げるところがないですから。電池を冷やしていく機構が従来のものと違うということで、液体が(外装にある)弁から入って電池を冷やしていく仕組みとか」

水冷式蓄電池モジュールの製造

蓄電池モジュール約22万個(3.9ギガワット)

2024年7月に試験稼働を始めたパワーエックスの工場では、船に載せるための特別な蓄電池を製造しています。安全性を高めた「水冷式」の蓄電池モジュールを、ほぼ全自動で組み立てることで、安定した品質を確保しています。1年間で生産できる蓄電池モジュールは約22万個。岡山市全世帯の1日の電力を賄える規模です。

瀬戸内海沿岸の造船業との協力

造船関連工場

パワーエックスは製造拠点として、造船業の盛んな瀬戸内海沿岸を選びました。例えば、玉野市内には造船関連の工場があり、重さ140キロもの蓄電池モジュールを軽々と釣り上げるクレーンがあります。今治造船との協力により、電気運搬船の建造も進められています。

パワーエックス 伊藤正裕社長

パワーエックス 伊藤正裕社長:
「造船は日本でもたくさんできて、蓄電池の生産もできるので『全世界に売りに行ける発明』なんだと思っています。そこは我々が何とかして実現したいです」

地方創生と未来の展望

日本経済新聞社岡山支局 中野颯太記者

日本経済新聞社岡山支局 中野颯太記者:
「パワーエックスがこの地で取り組むのは「先端企業流の地方創生」です。自然に恵まれ、住居費も抑えられる地の利は、働く人を集めるためのポイント。地方へ『人の流れ』が生まれるか、注目されます」

パワーエックスの挑戦は、再生可能エネルギーの普及と地方創生に寄与する重要な一歩です。今後の展開に期待が寄せられます。

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