花粉症を抑える成分がユズの約6倍 特産のかんきつ類で「ふるさと納税」が9億に 和歌山の小さな村の戦略
さまざまな返礼品が届くことから「ふるさと納税」が人気を集めています。そんな中、人口400人ほどの和歌山県の小さな村が9億円ほどの寄付を集めました。原動力となったのは村を支える特産品でした。
北山村と特産品「じゃばら」
和歌山県にある人口約400人の小さな村「北山村」。特産品は「じゃばら」です。じゃばらは独特の強い香りが特徴のかんきつ類で、酸味と苦みが強く、生食には向きません。そのため地元では昔から、お酢の代わりとして使われてきました。
北山振興 宇城 公揮さん:
「村の産業として何かないかなと言うときにこれ(じゃばら)があるぞって。ただ、残っていた木が1本だけだった。接ぎ木で5000本まで増やして、いまがあります」
じゃばら事業の転機と成功
1980年代、村おこしの一環としてじゃばらの商品化に乗り出しましたが、事業は赤字続きでした。しかし、2003年にじゃばらには花粉症のアレルギー反応を抑える効果があると学会で発表されました。その後、アレルギーを抑える「ナリルチン」という成分がユズの約6倍含まれていると判明。この発見がきっかけで、じゃばら事業は急速に成長し、村を支える産業となったのです。
「じゃばらいず北山」の設立と事業拡大
次の一手として、北山村はじゃばらの事業をすべて「じゃばらいず北山」に移管しました。社長に就任したのは役場の職員でじゃばら事業を担当していた池上(いけうえ)さんです。
じゃばらいず北山 池上輝幸社長:
「当時の村長が『じゃばら事業は村でやるものじゃない』と。人口も少ないので将来的に村が合併した場合でも会社を村に残したいという話もありました」
これにより新商品の開発や営業先の新規開拓など、事業拡大のスピードが早まりました。商品数は8種類から30種類に増加し、ふるさと納税の人気返礼品に。2022年度には9億円以上の寄付を集め、住民1人あたりの受入額が全国1位となりました。
ふるさと納税と新たな販路
北山村は2023年に事業費およそ10億円の加工場を新設し、建設費の一部にはふるさと納税が活用されました。大量生産の体制を整え、ふるさと納税以外の販路拡大にも力を入れています。加工場が新しくなったことで衛生面が整い、カゴメとのコラボジュースの実現など大企業との取引も進んでいます。
未来の展望と産業革新
日本経済新聞社 中村奈都子編集委員:
「自分たちで収穫・加工・販売。こういった1次・2次・3次を合わせて6次産業化を実現しているのが北山村のいまの強みだと感じています」
現在、「じゃばらいず北山」では菓子製造業を新たに取得。じゃばらを使ったチョコレートの商品開発にも挑戦していて、今年中の商品化を目指しています。