子ども靴の需要減「ムーンスター」が大人向きで日常使いできる靴に注力 1足7000円程度で人気

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福岡県久留米市に本社を置く老舗・靴メーカー「ムーンスター」。少子化の影響で子ども用の靴の需要が落ち込む中、自社のノウハウをフルに生かした大人向けブランド靴「810s エイトテンス」を手がけました。日常使いができることをコンセプトにしたエイトテンスは、シンプルかつ洗練されたデザインがSNSで話題を呼んでいます。ムーンスターの取り組みと、ブランド構築の背景に迫ります。

「エイトテンス」の特徴とコンセプト

エイトテンス

エイトテンスは、腹八分のような「ちょうどいい靴」を意味します。1足7000円程度で、年齢や性別に関係なく、日常使いできることがコンセプトです。高い機能性もセールスポイントになっていて、業務用専門靴のノウハウを取り入れました。

水を逃がしやすいカッティングを取り入れている

例えば、鮮魚店などで使う長靴。ムーンスターが強みとしてきた業務用の専門靴のノウハウを取り入れ、吸盤状の加工や水を逃がしやすいカッティングを採用しています。そうすることで、濡れた床でも滑りにくいんです。

26万人の足型データを収集

また、日本人の足に合ったデザインを追求し、蓄積した26万人分の足型データを活用しました。横幅が広く、甲が高い日本人の足に合わせて、多くの人が履き心地の良さを感じる設計にたどり着きました。

日常使いブランドに注力する理由

「ゴム3社」の1つといわれる名門企業

ムーンスターは、久留米発祥のタイヤメーカー「ブリヂストン」や「アサヒシューズ」と並んで「ゴム3社」と称される九州の名門企業です。しかし、少子化による上履き市場の縮小や原材料高、人件費の高騰などで収益構造の転換が求められています。

日本経済新聞社 黒澤亜美記者:
「ムーンスターは、6期連続赤字という状況。主力の学校用の靴に依存せず日常靴のブランドのエイトテンスで、デザイン性と実用性を求める新しい客層を取り込めるかが業績回復のカギとなります」

戦略的な販売ルートと成功

東京・自由が丘、去年8月2店舗目オープン

エイトテンスは東京と福岡の直営店、ユナイテッドアローズなどの人気セレクトショップでのみ販売されています。販売ルートを絞ることで、客との対話を通じて背景を伝える機会を重視しているのです。この戦略が功を奏し、2020年度から昨年度にかけて売り上げは4倍に増加。2024年8月には東京・自由が丘に2店舗目をオープンしました。

ムーンスター マーケティング戦略部 宝蔵寺 誠部長

ムーンスターはエイトテンスを通じてユーザー層を広げ、国内市場のみならずアジアなどの海外展開も視野に入れています。

ムーンスター マーケティング戦略部 宝蔵寺 誠部長:
「学校靴や業務用の靴のファッションとしては見られなかった部分を、デザインを整え直して作ったものです。エイトテンスでムーンスターを引っ張っていけたらいいな、と思います」

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