視覚障害者の「見えない」が「分かる」に 画期的な装置が開発中 2026年の実用化目指す

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全盲などの視覚障害がある人は日常生活を送る上で大きなハンディを背負っています。「視覚障害の世界を変える」。この思いを胸に、画期的な装置の開発に挑む会社を取材しました。

視覚障害者のQOL向上を目指す「SYNCREO(シンクレオ)」

視覚障害者が周囲の状況を音と振動で把握できる装置

高松市在住の樋口玲皇(れお)さんは、30歳で後天性の視覚障害を負い、現在はほぼ全盲の状態です。しかし彼が装着するある装置は、視覚を使わずに周囲の状況を正確に把握する助けとなっています。

樋口玲皇さん

樋口さんが装着している「SYNCREO(シンクレオ)」は、視覚障害者が周囲の状況を音と振動で把握できる装置。開発したのは、高松市で2017年に設立したスタートアップ企業、Raise the Flag.です。視覚障害者の「生活の質」向上を目指しています。樋口さんはSYNCREOを使って、目の前の状況をかなり正確に把握できるようになりました。

樋口玲皇さん:
「こっちの向こうが空間が空いていて、建物があって。電話ボックスが2つ並んでいるんですかね?」

開発の原点は全盲の少女の言葉

Raise the Flag. 中村猛CEO

この会社を立ち上げた中村猛CEOは、テレビで見た全盲の少女の言葉「見えないことって、不便なだけで不幸ではない」に感銘を受け、不便を解消するために技術開発を始めました。

カメラが撮影した画像から対象物までの距離を割り出す

SYNCREOの要は、額部分のカメラです。このカメラが撮影した画像から対象物までの距離を割り出し、その情報を「音」と「振動」に変換します。対象物までの距離が近づくと「ブブブブブ」と音と振動が速くなり、逆に対象物がないと「ブ、ブ、ブ」とゆっくりとした音と振動に。さらに、AIを使ってモノの色や種類を伝える機能も開発中です。

投資家や企業も熱視線を向ける

日本経済新聞社 高松支局 鈴木泰介記者:
「この装置は視覚障害者のQOL(生活の質)向上や、点字ブロックの設置など、ソフト・ハード両面で、社会コストを大幅に減らすことができます。視覚障害者補助のデジタル製品市場は世界的にブルーオーシャン。投資家や企業も熱視線を向けています」

社会的影響と未来の展望

カフェ店員を想定したデモンストレーション

一般社会で孤立しがちだった視覚障害者。SYNCREOは、就業にも道を開こうとしています。

カフェ店員を想定したデモンストレーションが9月28日に行われました。そこでは視覚障害者が無事に、飲み物を提供することができたのです。この装置は2026年の商品化を目指しており、視覚障害者の就業支援にも大きな期待が寄せられています。

「母数が小さい分野ほど、スタートアップが課題解決することに意義がある」と中村CEO

中村CEOは、「視覚障害者の母数は少ないが、うちのようなスタートアップが担うことが存在意義だ」と語り、今後も技術開発に注力していく方針です。

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