「のぞみ全席指定席化」実現の裏側 デッキに立つ乗客をなくし快適な輸送を【東海道新幹線開業60周年】
東海道新幹線が60周年を迎えました。最近の変化として印象的なのが「のぞみ全席指定席化」。繁忙期には全席指定席にすることで、乗客が快適に移動できるよう配慮されています。年末年始やお盆などでよく耳にした“100パーセント越えの自由席乗車率”も、最近では聞かなくなりました。
どのような工夫が施されているのか、進化する「のぞみ」の秘密に迫ります。
繁忙期の全席指定席化
東海道新幹線の「のぞみ」は、年末年始やお盆など繁忙期に全席指定席化を実施しています。JR東海の運輸営業部輸送課、係長の井澤憲哉さんは「全席指定席は乗客に快適に着席してもらうための措置。以前はデッキまでぎっしり立ち乗り客がいたため、快適な利用が難しかった」といいます。運行本数を増やすことで立ち乗り客を減らし、快適な移動を実現しています。
高密度ダイヤの課題と解決
東京と大阪を約2時間半でつなぐ「のぞみ」が誕生したのは1992年です。当時の運行本数は1時間に1本でしたが、品川駅が開業した2003年には1時間当たり7本に増加。その後も少しずつ運行本数を増やし、2020年には1時間当たり12本の運行が可能になりました。
しかし12本ダイヤを達成するには、15秒単位での発車時刻調整が必要です。井澤さんは「隙間なくのぞみ12本を設定すると、15秒の遅れが後続列車に波及してしまう」と話します。遅れを出さないためには、車両性能の向上が不可欠。そこで最高速度285キロの車両に統一することで駅間の走行時分を短縮し、高密度ダイヤを実現しました。
さらに減速してホームに停車するまでに3分かかっていたところを、ブレーキ性能を上げて2分に短縮。「1つひとつの積み重ねが、大きく影響している」と井澤さん。
東京駅での折り返し運転の効率化
高密度ダイヤを支えるためには、東京駅での折り返し運転の効率化も重要です。そこで活躍するのが、ホームに設置された「開通予告表示灯」。
上のランプは開通予告表示灯で、新幹線の進路を作る分岐器がもうすぐ動くことを示しています。駅員はこのランプの点灯を合図に安全確認を行います。そして分岐器が進路を作ったところで下のランプが点灯するのです。