年間100万人が来店する駄菓子店の人気の秘密は子ども目線の店づくり 広さはテニスコート10面分
人口5万人に満たない岡山県の小さな街に、年間100万人が訪れる駄菓子店があります。一番の顧客である、子どもを最優先した仕掛けの多い売り場に密着して、人気の理由を探りました。
広大な売り場と豊富な品ぞろえ
「日本一のだがし売場」は、その広さがテニスコート10面分にも及び、約5000種類の駄菓子がそろっています。店内にはエナジードリンク味、焦がし生キャラメル味まで、多様な味が楽しめるお餅風のお菓子など、見慣れない商品も多く並んでいます。
「だがしおじさん」がつくる子ども目線の売り場
店の特徴は、子どもたちが自分で商品を選びやすいように工夫された売り場。棚の高さは幼児の目線に合わせて設計されていて、子どもたちは自分で選んでカゴに入れることで、ちょっぴり大人な気分を味わえます。
「だがしおじさん」として知られる大町の秋山秀行社長は、「売れるとか売れんとかは関係ない。選ぶのは子ども」と語ります。
小売業としての成功と経営の秘訣
さらに、駄菓子にはすべて値札シールが貼られており、子どもたちが自分で価格を計算できるよう工夫されています。このシンプルな取り組みが、子どもたちの算数の学習にもつながっています。
「日本一のだがし売場」を運営するのは、食品卸の大町。2011年に倉庫の一角で始めた小売がルーツです。駄菓子メーカーの希望する価格で商品を仕入れ、定価で販売することで、メーカーと共に利益を確保しています。12期連続の黒字を達成しています。平均客単価は約3000円、中には約2万5000円を支払う客もいるほどです。
日本経済新聞社 岡山支局 深野尚孝支局長:
「駄菓子を手がける中小メーカーは、価格や納期など流通大手の要求に応じられず、事業継続を断念するケースも少なくありません。そんな中、商品の魅力発信をはじめ、業界全体を盛り上げています」