大垣書店「書店の冬の時代」に稼ぐ 直営店は10年で2倍に 本だけじゃない「出会い戦略」に好機
書店業界は今“冬の時代”とも言われています。業界団体の調べによると“書店ゼロ”の市町村は、全国で約3割もあります。そんな中、この10年で店舗数を約2倍に増やした書店グループがあります。客を呼び込む、意外な仕掛けとは。
経営哲学は「出会いの場」を作る
5年前にオープンした「大垣書店 京都本店」です。増収が続き、直近3年は2桁のプラス成長を記録しています。大垣書店全体でも、この30年間売り上げを伸ばし続けており、直営店の数は10年で2倍に増加しました。
大垣守弘会長は「出会いの場を作る。『おもしろい本ないかな』と探している人に応えられる店づくりをしている」と話します。迷路のような通路は、本との出会いを生み出すための戦略だったのです。
書店の多様な取り組み
大垣書店の成功は、本だけに限りません。例えば、京都本店では土産物コーナーを設置し、一般的な商品ではなく、新たな出会いを意識した珍しい品ぞろえを提供しています。さらに、消臭スプレーの実演販売も行っており、女性客からは「本を買う以外の面白いことがある」と好評です。
ネットのアルゴリズムでは出ない発見と出会い
高野店の和中整店長は、哲学書や評論などの難解な本を入り口近くに配置。詩や短歌の本を目立たせる工夫もしています。詩人でもある書店員が「近くの大学が盛んに大学短歌会をやっている」と、需要アップの兆しを嗅ぎ取ったからです。
大垣書店はまた、京都に特化したカルチャー雑誌を創刊し、文化遺産や地元の名店を取り上げています。雑誌を購入した人だけが参加できるイベントも開催するなど、地域の活性化と書店の魅力向上を図っています。