「浄酎のロックで」 広島で生まれた「第3の酒・浄酎」が世界へ 樽由来のウッディな香りも楽しめる
日本が生んだ酒といえば、「日本酒」や「焼酎」などがありますが、今広島で生まれた「第3の酒」が広がりつつあります。世界に売ることで日本の酒文化を守ることにもつながるというこの新しい酒、どんなものなのでしょうか?
広島の居酒屋で話題の「浄酎」とは?
広島の繁華街に位置する一軒の居酒屋で、客が「初めて飲む」という特別な酒「浄酎」が話題を集めています。この酒は、まるで高級ウイスキーのような味わいながら、じつは焼酎でもあり日本酒でもあるという不思議な存在です。
手がけたのは、広島の酒蔵跡にある「ナオライ」。彼らは日本酒を原材料とし、中の気圧を下げて沸点を低くする「低温蒸留技術」を用いて日本酒の香りや風味を最大限に引き出すことに成功しました。アルコール度数はウイスキー並みの41度で、常温での長期保存も可能です。
悔しさからスタートした開発
ナオライの社長・三宅紘一郎さんは創業する前の9年間、中国で日本酒の販売に携わっていました。常温で置かれて品質が下がって売れない状況を目の当たりにし、日本酒を海外で流通させる難しさを感じたといいます。
ナオライ 社長 三宅紘一郎さん:
「常温で置いといても現地のバイヤーが『これは価値が高まるもの』と思ってもらえるものを造りたいという悔しさから、開発に至りました」
「浄酎」の価格は1本1万円以上と高価。蒸留させた日本酒は、量は4割ほどに減りますが、普及価格帯の日本酒として売るのに比べ、数倍の価格になります。
日本経済新聞社 広島支局 古林 悠夏記者:
「日本酒の酒蔵の数は20年前の4分の3にまで減少しています。日本酒を一定量買い取るナオライの取り組みは、売り上げの減少に悩む酒蔵にとっても安定した収益をもたらすことが期待されます」
「ナオライ」の革新的な蒸留技術
「浄酎」はミズナラやオークなどの木のたるで長期熟成させ、ウイスキーのように色や味、香りの変化を楽しめます。ホテルグランヴィア広島「メイフラワー」の山口輝之支配人は、「たる由来のウッディな香りがありつつ、ウォッカやラムのような素材本来の“切れ”を生かした酒。非常にバランスがいい」と話します。
ナオライ 三宅さん:
「すごく丸い感じの熟成酒になっていく。置けば置くほど価値が高まります」