リーマン・ショックで売り上げ9割減のどん底町工場、奇跡の逆転劇 ロケット部品の依頼を受けるまで

経済(総合) コラム・特集 企業 友だち追加

まるで「わらしべ長者」 倒産危機からの復活

アルミ製の小さなワイングラス

復活ののろしとなったのは、展示会用に作ったアルミ製の小さなワイングラス。グラスの底には自社技術をPRするため、ロゴを刻んでいた。

グラスの底に刻んだロゴ

「なんか印鑑みたいですね」ロゴを見た1人の客のつぶやきに、山添社長はひらめく。「なるほど、印鑑か。ちょっと面白いかも…」すぐさま印鑑づくりに着手し、鉄よりも硬いチタン製の印鑑を商品化した。

「SAMURA-IN」

その名も「SAMURA-IN」。この印鑑は2015年にグッドデザイン賞を受賞し、ヒット商品に。

高度なチタン加工技術を潜水艦の部品に生かすことに

その後、また別の展示会で、ある男性から「こちら作れますか?」と1枚の図面を渡される。それは、潜水艦の部品の図面。男性は「チタンを削る技術を潜水艦の部品に生かしてほしい」と山添社長に告げる。

すさまじい水圧がかかる潜水艦の部品には、硬いチタンが多く使われている。高度なチタン加工技術を持つ「中村製作所」、潜水艦の部品メーカーが目を付けるのは当然のことだった。

図面を見た山添社長は、「細かすぎないか…」と一瞬眉をひそめるが、ここは千載一遇のチャンス。「できます。やらせてください」と答えた。

これまで以上に精密さが求められる極めて高度な作業…。ゼロからのスタートだったが、持ち前の“削る”技術で開発を進める。

実際の部品

そしてついに完成! これが呼び水となった。今度はうわさを聞きつけた航空機メーカーからチタン製部品の製造依頼が。こちらも初の試みだったが、見事にやり遂げることができた。さらに「ロケットの部品を作ってほしい」との電話まで。

「わらしべ長者の精神」と山添社長

山添社長は「最初からロケットにつながろうと思ってやっていたわけではない」と話す。「わらしべ長者の精神。1個1個お客さんに向き合って応えていった。その商品が次々新しいお客さんと結びつけてくれる。ロケットや飛行機など、人のために役立つ仕事は、お金とは違った喜びになる」そう力を込めた。

おすすめの記事

おすすめの記事

アクセスランキング

アクセスランキング

ページトップへページトップへ