「透明度高い川は要注意」 流されてしまった時の対応を専門家が解説 水難救助訓練にはヘリコプターが出動
水難事故が増える時期を前に、愛知県一宮市の木曽川で6月19日、救助訓練が行われました。
訓練は、名古屋市消防航空隊と一宮市消防本部が、実際の水難事故の現場で迅速に連携できるよう、合同で実施しました。19日は川を泳いでいた人など、2人が流されたとの、想定で行われました。
訓練では、要請を受けて駆けつけたヘリコプターの隊員がロープで降りて、直接救出したほか、ヘリコプターからの要救助者の情報をもとに潜水隊員が潜って、ボートで救助するなどの連携方法を確認しました。
一宮消防本部 白川亮 木曽川消防署長:
「実際の水難救助現場で的確迅速に連携できるよう、今回訓練を実施した。最近の豪雨などで川底が削られ、今までよかったところでも流れが速くて流されることがある。もしそういう人を発見したら、必ずいち早く119番してほしい」
東海地方には水の事故「多発地点」が集中
これからの季節、川や海などで多発する水の事故。東海地方は特に水の事故の死者数が多い傾向にあるんです。
東海地方の2023年1年間の水の事故による死者数は、岐阜県は28人と全国で5番目に多く、愛知県は23人で全国で6番目、三重県は21人と全国で10番目です。全国ワースト10の中に東海3県が全て入っているんです。
死者数が多い理由の1つが、水の事故の「多発地点」の多さです。「多発地点」とは、河川財団がまとめた、過去10年間に死亡事故が3件以上発生した地点で、全国に46カ所あります。このうち、愛知県と岐阜県だけで16カ所あり、全国の3分の1以上を占めています。
3日前の6月16日にも、相次いで水の事故が発生しました。岐阜県美濃市の板取川では、家族で遊びに来ていたシリア国籍の男性が溺れて死亡。同じ美濃市内の長良川でもパキスタン国籍の男性が溺れて死亡しました。
専門家が指摘「透明度が高い川は厄介」
なぜこの地方は水の事故が起こりやすいのか、水難学会の斎藤秀俊理事に話を聞きました。
斎藤理事:
「(東海地方は)魅力のある川が流れている。透明度が高い、周りに山々で囲まれている。きれいな水であればあるほど、川底がよく見える。これが厄介な話で、普通に考える(実際の水深)よりも浅く見える。これがかなり浅く見える。ここなら背が届くと思って近づこうとして、次の1歩を踏み出した瞬間に、思いもよらない深さで、しまったと思ったときには溺れている」
では、もし流されてしまったときは、どうすればよいのでしょうか。
斎藤理事:
「まずは浮いて待つことが大事。例えば靴を履いていれば、背浮きというすごく簡単な浮き方で、呼吸を確保することができる。持っている浮く手段をうまく活用して、顔を水面から出して呼吸を確保する」
また、流された人を発見したときにも大事なことが。
斎藤理事:
「陸から溺れた人を見かけたときは、水に飛び込まないでほしい。水の中で溺れている人は、そこに溺れる要因があるから溺れているので、自分もその中に入ると当然、最初に溺れた人と全く同じ目に遭う。よほどの救助の訓練を受けている人でない限り、不用意に水に飛び込んで人を助けることはしないでほしい」
昨日のような大雨が降った次の日にも、気をつけることがあるといいます。
斎藤理事:
「雨の翌日によくある事故というのが、川が増水してどこまでが深くて浅いかが分からなくなる。そういう時に(川沿いの)草むらを少し入ると、急に深くなって滑って落ちる事故が結構ある。どこからが川か陸かが分からなくなってしまうことが、増水のときの川の危険性になる。今の時期どんどん暑くなって、冷たい水が目の前にあると、飛び込みたくなる気持ちは分かるが、ここはプールと違って飛び込んだら最後、危ないと思っていただいて避けてほしい」