「かなり過密になっている」救急車の有料化どうなる 名古屋では23年に過去最多15万5776件の出動
救急体制がひっ迫する中、救急車を「有料化」する自治体も増えています。名古屋市も「有料化」をするのか、取材しました。
名古屋市の出動回数は過去最多の15万件超 ただ「軽症」とされる人が全体の57%
名古屋市役所の中にある、市の防災指令センターです。
名古屋市防災指令センター 職員:
「119番です。火事ですか? 救急ですか? 倒れて? 意識は? 意識消失…あ、嘔吐も?」
「はい、いま救急車向かわせました。声をかけて反応はありますか?」
ここは24時間365日、市民からの119番通報を受け付ける窓口。市民の命を救う最前線です。5月24日午前、カメラを回し続けると、救急車の出動は30分で12回ありました。2分半に1回のペースです。
市内の消防署は、指令センターからの連絡を受け、現場に急行します。名古屋市で救急車が出動した件数は、2023年の1年間で15万5776件。過去最多となりました。
名古屋市消防局 担当者:
「令和6年に入ってからも救急件数は伸びていて、令和5年のペースを上回っている。救急需要の高まりによって、搬送の体制がひっ迫する可能性は十分にある」
一方で、名古屋市によりますと、救急搬送をした人のうち、入院を必要としない「軽症」とされる人が全体の57%でした。
名古屋市消防局 担当者:
「実際に『交通手段がない』『どこの病院に行こうかわからない』ということで、(救急車を)呼ぶ人もいるが控えていただいて、一方で体調に不安があれば迷わず救急車を呼んでほしい」
河村市長「金を取ることは考えていない」 救急車を呼ぶと7700円徴収の自治体も
全国でも救急車の出動件数は増加していて、2023年1年間で約764万件。過去最多を記録しました。
救急車の適正利用を促すため、三重県松阪市は松阪地区の3つの総合病院で、「救急搬送されたものの入院しなかった軽症患者」から選定療養費として7700円を徴収することを決めました。
こうした対策について名古屋市の河村市長は…
名古屋市 河村たかし市長:
「金を取ることは考えていない。金を取るということは金のない人からすれば断られるに等しくなる。それはいかん。(ただ)タクシーがわりはいかんと言っている」
ひっ迫緩和については…。
名古屋市 河村たかし市長
「救急車も増やして、隊員も増やして。サービスするのが行政の責任」
名古屋大学医学部附属病院救急科の山本医師も医療現場は過酷な状況だと話します。
名大病院救急科 山本尚範医師
「10年前に夜の当直をしている時と、今、当直をしている時では忙しさがまったく違う。救急車はどんどん来ますし、かなり過密、過労な状況になっていることは間違いない」
救急車の利用の可否については、医療従事者の立場と利用者の立場で判断基準が違うことが問題だと指摘します。
名大病院救急科 山本尚範医師
「医療的なことだけ申し上げれば、救急車は今すぐ治療をしなくてはいけない患者が救急車を呼んでいただく対象になる。ただ、皆さんの立場からすると自分たちではなかなか病院に連れていくことができない方も救急車を呼ぶ。自分たちで連れていくのは不安。そこは立場によって見方は違ってくる」
では、不適切な利用者を減らすために必要なことは?
名大病院救急科 山本尚範医師
「症状を入力すると、急がないといけないとか少し時間がかかっても大丈夫なので自身で受診するかが分かるアプリ。政府や医療機関が一緒になってサイトを作り情報を得れば確かだ、というものがあるとよい」