中国がバチカンと「国交樹立」狙っている!? キリスト教を味方にして“台湾ひとりぼっち作戦”
今年1月、南太平洋の島国「ナウル」が台湾と断交し、中国と国交を結んだ。中国に強硬姿勢の民進党が勝利した直後のことで、狙いすました嫌がらせと見られている。台湾と国交を持つ国はこれで12カ国(2024年2月10日時点)に減ったが、さらにドミノ倒しのように断交が続く恐れがある。そのカギを握る国とは…。
憎しみ合っていたはずの中国とバチカンが急接近!?
イタリア・ローマにある「バチカン市国」。世界一小さな国だが、そこはキリスト教最大宗派「カトリック」の総本山で、全世界に約14億人の信徒を抱える。その頂点に立つのがフランシスコ・ローマ教皇だ。教皇のメッセージは国際政治を動かす力を持つ。
そんなバチカンは現在、台湾との国交はあるが、中国とはない。なぜなのか? 東洋大学・国際学部講師の山崎周氏は、中国・共産党への“憎しみ”が理由だという。
「1949年、新しい中国が成立した時、国内でカトリック教徒に対する様々な迫害が行われました。例えば、教会のキリスト画を毛沢東の肖像画に変えたり、あるいは宣教師が暴力を受けたり、最悪の場合は処刑されたのです。恨みが重なって中華民国(台湾)と国交を結ぶという判断に至ったと思います」(山崎氏)
ところが習近平政権になってから、憎しみ合ってきたはずの両国の関係が急速に改善していく。2020年、ドイツで69年ぶりに両国の外相会談が開かれ、がっちり握手を交わす姿が世界に発信された。さらに、北京で開かれた国際園芸博覧会にもバチカンが招待されたのだ。
一方、バチカンにも変化が。2023年9月、モンゴルを訪問したフランシスコ・ローマ教皇はこんな言葉を発した。
「中国の高貴な国民に心を込めてあいさつを贈りたいと思います」(フランシスコ教皇)
中国に配慮するようなメッセージだ。さらに同月、ローマ教皇の特使が中国を訪問。ウクライナ問題などに加え、国交樹立も話題になったとされる。
中国がバチカンと国交樹立で台湾ひとりぼっち!?
現在、台湾と国交がある12カ国はすべてキリスト教国だ。もしもバチカンが中国と国交を樹立すれば、他の国も次々に中国に乗り換え、台湾は“ひとりぼっち”になる恐れがある。
テレビ愛知の『激論コロシアム』に出演した中国人ジャーナリスト・周来友氏は、「台湾を孤立化させるために、中国はバチカンと国交を結ぼうとしている」と断言した。
宗教と中国・共産党は相容れないように見えるが、現代ビジネス編集次長の近藤大介氏も「新時代の中国の特色ある社会主義宗教、というのがある。アラーの神であれ、キリストの神であれ、その上に習近平氏がいるという考えだ」と述べ、宗教との敵対ではなく、宗教の中国化を進めていると指摘した。
またジャーナリストの野嶋剛氏は「バチカンが中国に近づいているという側面もある。世界中でカトリック教徒が減る中で、中国には公式、非公式あわせ千数百万人の教徒がいる、それがごっそり入ってくる。宗教団体として組織として広げたいのだろう」と推測した。
巨大宗教を味方につけ、台湾を揺さぶる中国。もしも国交を持つ国がゼロになれば、
台湾は“事実上の国家”というロジックも薄れてしまう心配がある。