能登半島地震「道路状況悪く、患者の輸送は困難を極めた」 現地支援の医師が語る被災地

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石川県七尾市で1月3日から5日まで医療支援を行った、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院の吉岡裕一郎医師に、現地支援について話を聞きました。

吉岡裕一郎医師

――現地で3日間、穴水町の介護施設の救急患者を七尾市内に搬送する業務に当たられていたそうですね。穴水町から七尾市に患者を搬送しなければいけない状況だったのでしょうか。

大規模災害が起きると、医療のニーズは爆発的に増えます。そうすると、現地の医療を維持するため、医療リソースをたくさん使う患者は積極的に外に搬送しないといけなくなります。そのため我々が現地に行って、早めに搬送する活動を行っておりました。

搬送すべき方は医療を必要としている方なので、医師が観察しながら搬送しないといけません。

1人搬送するだけで精一杯

交通状況

――搬送業務で最も大変だったことは道路の状況とのこと。どのような状況でしたか。

画像は七尾市から穴水市、あるいはさらに奥になる輪島市や珠洲市に向かう唯一の道です。道路が崩落して車が落ちていたり、亀裂が走っていたり。その1本の道路ですら、片側交互通行で渋滞に巻き込まれることが何度かありました。

――穴水町から七尾市までは約30キロとのことですが、このような場所は30キロ以内にどれぐらいありますか。

記憶の限りでは最低でも5、6カ所、小さなところを含めると10カ所以上あったと思います。

通常は七尾から穴水まで1時間程度で行けるそうですが、行きが5時間、帰りは6時間かかって搬送が完了するのは日付が変わったぐらいになりました。

――1日1人、搬送できるかどうかというくらいですよね。

本当は数十人単位の搬送人数を予定していたと思いますが、1つの班がピストン輸送することもできず、1人搬送するだけで精一杯という状況でした。

―――「誰をどこに搬送するか」という情報が錯綜するなどの混乱はなかったのでしょうか。

日赤救護班やDMATは、指揮命令系統の確立という訓練を受けています。最初にすべきは指揮命令系統の確立になるため、我々は指示に従って搬送します。多少時間はかかりましたが、行うことはできました。

――予想と現状で違ったところや混乱はありましたか。

道路状況が非常に悪いので、我々がたくさん集まっても行くだけで時間がかかるのが少しもどかしく感じました。

――今後、被災地でさらに困っていくのではないかと感じたことについて教えてください。

今後も被災地の医療ニーズは増え続けます。特にフェーズが急性期から慢性期に移行していくと、持病の悪化やストレス、感染症、エコノミークラス症候群といった「災害関連死」が問題になると思います。これに対する長い支援が必要かと思います。

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