松下幸之助の102カ条 「指導者である前に人間性を見つめ直せ」名鉄会長の人生を変えた一冊
名古屋鉄道の会長を2021年から務める安藤隆司さん。どのような本を読み、影響を受けてきたのか。本人に「人生を変えた一冊」を選書してもらい、その魅力を紹介してもらいます。選んだのは、松下幸之助氏の著書「指導者の条件」。“経営の神様”と呼ばれた松下幸之助氏が、指導者に必要なことを102カ条にまとめた名著です。
――「指導者の条件」と出合ったきっかけは何ですか。
名鉄の役員時代に勉強しようと思って買いました。その後、社長になったときに本棚から取り出して読んでみると、すっと心の中に入ってきたんですよね。経営者や指導者である前に「人間としてちゃんとしているか」を考えさせられます。102カ条の1カ条ずつを心に刻みながら、自社の経営と結び付けました。現在も何度も読み返して、気になった場所には付箋を貼り付けています。
自分を見つめ直すきっかけをくれた
――どんなときに読み返しますか。
会社の経営が上手くいっているときにふと読んでみると、「そんなに調子に乗ってはいけない」と自分を見つめ直すきっかけを与えてくれるんです。自分1人で経営してきたのではなく、世の中や周囲の人たちがコーディネートしてくれた結果なのだと。今、上手くいっているだけなのだと気づかされますね。
周囲の意見を聞いて経営する「衆知を集める」
――「指導者の条件」で特に思い浮かぶエピソードについて教えてください。
松下幸之助さんは「指導者の条件」の中で、中国や日本の故事を例にあげ、その時代の指導者がどのように行動したのかを紹介しています。中でも「衆知を集める」は印象的でした。「みんなの意見を聞いて経営にあたりなさい」と。経営者に対してしっかりと指摘をする人の意見を大事にしなさい、と諭してくれました。経営をする上で念頭に置いている言葉の1つです。
現代を生き抜くリーダーに必要な「先見性」
――現代のリーダーに必要な素養を教えてください。
みんなで協力をして種を守る、相手の立場に立って物事を考えてチームとしての力を強める。そうした本質は昔から不変であり、現代にも通じる必要な素養だと感じます。そのために歴史や過去の本を読んで、先人から学ぶことが大事です。今も昔も、変わらないと思います。人間は強い生き物ではありませんから。
――先が見えにくい世の中ですが、この本にはヒントになりそうな項目がいくつもありますね。
経営は「見えない先も見る」もの。会社のトップの方針が定まっていないと、社員も路頭に迷います。本の中でも紹介されていますが、将来起こりそうなことを準備する「先見性」は経営者が持つべきだと感じます。