【専門家解説】所有者が不明な土地、「相続土地国庫帰属制度」で減らせるのか 東日本の震災以降に問題視

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「所有者が不明の土地」を将来的に減らすことができるのか。不動産関連の法律に詳しい弁護士の荒井 達也さんに話を聞きました。

「相続土地国庫帰属制度」でいらない土地が減少と予想

相続土地国庫帰属制度のNG条件

―――そもそも、なぜ所有者不明の土地をなくしていかないといけないのですか。

所有者不明の土地は、東日本大震災のときに問題になりました。東日本大震災で多くの人が津波で被災し、新しい住宅地を津波が来ない高台に建てようと自治体が用地取得、土地の買い占めをしたんです。

しかし、そのときに所有者が分からない土地が結構見つかったんです。古いものだと、明治時代から名義が変わっていないような土地もありました。その用地取得にかなり時間がかかってしまい、震災復興が遅れてしまったんです。そういった問題から、できるだけ所有者が分からない土地は減らしましょうと、国の大きな考えになっています。

―――この制度で所有者が分からない土地は将来的には減っていきそうですか。

結論としては、減っていくと思います。下記のような条件がありますし、お金の支払いも必要です。とはいえ、どのような土地でも引き取ってもらえるわけではありませんが、こういった土地を手放せる制度が日本にアナウンスされることで、より考える人が増えると思います。

●相続土地国庫帰属制度のNG条件
・上に建物がある
・墓地内、境内、通路など、第三者が使用する予定のある
・定期的な伐採が 必要な樹木がある

例えば、自治体の「空き家バンク」を使うとか、近隣の人に引き取ってもらうとか。相続土地国庫帰属制度以外にも、土地を手放そうとする人が増えてくると思います。結果的には、少しずつ所有者不明の土地は減っていくのだと感じています。

いらない土地を手放すきっかけに

弁護士 荒井 達也さん

―――ただ、この制度で今すぐに所有者が分かっていない土地を減らせるわけではないのですよね。

明治時代の人の名義になっている場合は、その相続人を調べれば誰か出てくるケースもあります。誰が相続をするのか話し合いをして名義を変えなくてはいけないので、この制度が出てきたからその問題が消えるわけではありません。引き続き課題になると思います。

―――いらない土地を手放すべきなのか、売って手放すべきなのか、さらには相続を放棄して手放すべきなのか。専門家としてはどのような方法が良いと考えますか。

できるだけ売ってお金になるのが良いと思うので、近隣の人や本当に欲しい人を探すのが得策だと思います。それでも引き取り手がいない場合は、国庫帰属制度を検討していらない土地だけ切り離せないか検討すると良いかもしれません。

さまざまな手を尽くしてもなお手放せない場合は、プラスの財産を含めて相続放棄をお子さんたちにしてもらうことも一つの検討例です。

―――いらない土地を手放す選択肢の一つとして、国に引き取ってもらえる可能性が増えたのは、希望になりそうですね。

これまでできなかったことなので、非常に大きな制度だと思っています。

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