「ちょっとありえない肉質」 サステナブルなエサで出産後の牛「経産牛」の肉の価値向上で世界進出
「経産牛はもっと硬いですよね。それがない。ちょっとありえない肉質です」。そう話すのは、京都の住宅街にあるレストラン「CAINOYA」のオーナーシェフ、塩澤隆由さん。ここで使用されているのは、熟豊ファームが育てる「経産牛」です。熟豊ファームの経産牛は赤身の味わいを保ちつつ、和牛のような美しいサシが入っています。
熟豊ファームの取り組みと成功の秘訣を紹介します。
経産牛の魅力と熟豊ファームの取り組み
経産牛は赤身の味が濃い一方で、一般的な和牛より硬いとされ、ミンチや加工肉にされることが多いです。しかし熟豊ファームでは、赤身を残しつつ和牛のようなサシを持つ経産牛を育てています。
島根県、佐賀県、鹿児島県で約1000頭の牛を飼育。社長の石飛修平さんは実家が精肉店で、子どもの頃から経産牛の味の濃さを好んでいました。その価値を高めるため、経産牛専門の牧場を始めました。
サステナブル和牛「熟」の育成方法
熟豊ファームでは、サステナブル和牛「熟」というブランドで経産牛を出荷しています。サステナブルな理由の1つがエサです。一般的な飼料と比べて、ビタミンが10倍ほど入っているといいます。
各地の牧場から仕入れる経産牛は、それぞれ育った環境や食べてきたエサが異なるため、一定の肉質に育てるのが難しいです。
そこで、地域の酒造会社からの酒粕、干し芋、醤油かすなどの「食品残さ」を買い取り。バランスよくエサに混ぜて食べさせることで、栄養状態を整えています。1カ月ほど与えると栄養状態がそろい、半年ほど飼育したあとに一定の肉質にして出荷します。
国際的な評価と海外展開
熟豊ファームの経産牛は、ステーキの国際品評会「ワールドステーキチャレンジ2024」和牛部門で金メダルを受賞し、その品質が認められました。販売パートナーとなる銀閣寺大西は、ヨーロッパで経産牛が一般のお肉よりも高く評価されていることに注目し、熟豊ファームと提携。現在、販売先は海外22カ国に広がっています。
銀閣寺大西 常務 大西英毅さん:
「ヨーロッパのほうでは経産牛が一般のお肉よりも高く評価されていて、味が濃い。熟豊ファームさんのお肉をみたときにクオリティーが同じようなものが並んでいました。これを見たときに熟豊ファームさんとなら一緒に取り組めるのではないかと」