「だし文化は残したい」 瀬戸市の老舗乾物店が「だしスタンド」で復権図る 商店街活性化の一助に
愛知県瀬戸市のせと銀座通り商店街にある老舗乾物店。その3代目店主の挑戦が商店街全体に刺激を与えています。一時は廃業を考えた店が活気を取り戻した取り組みに迫ります。
1927年創業の老舗乾物店を改装
愛知県瀬戸市「せと銀座通り商店街」の一角にある老舗乾物店「尾張屋」。一見、喫茶店のようですが、だしをドリップして提供する「だしスタンド」になっています。3代目店主の森宏子さんが、1927年創業の尾張屋の店内を改装し、2023年12月に始めました。
店内にはかつお節を長期熟成した「鰹枯節」や、コクがある「鮪節」、さっぱりした「利尻昆布」など5種類がラインアップ。“だしソムリエ1級”の資格を持つ、森さんが提供しています。
かつお節は注文が入ると0.3ミリの厚さに削り、お湯をゆっくりかけてドリップ。香料も調味料も加えない、「だし」そのもの。客は「香りが違いますよね。非常においしいです」と笑みをこぼします。
閉店相次ぐ商店街に「閉める準備をしないと」
森さんが店を継いだのはバブル経済末期の1984年。以前は1日約20万円あった売り上げが「だしパック」や「顆粒だし」を揃えるスーパーマーケットの影響から、1日12万円にまで減った頃でした。
追い打ちをかけたのは商店街の衰退。「せと銀座通り商店街」が最もにぎわった1960年代、約60軒が軒を連ねていました。しかし、スーパーマーケットの台頭や後継者不足などで閉店が相次ぎ、1990年代後半には28軒に。「閉める準備をしないと、と思った」と、森さんは当時を振り返ります。