葬儀業界は「以前は消費者の弱みにつけ込むような姿勢だった」 ティア社長が語る愛読書と変革への思い
「葬祭業のあるべき姿に戻したいと思いました」。こう話すのは、名古屋に本社を構えるティアの冨安徳久社長。冨安社長が100回は読むと決めた本が「もう、国には頼らない」です。人生を支えた一冊と、葬儀業界への思いを語ります。
人生の中で「100回読む」と決心
――選書は難しかったですか。
すんなりと決まりました。100回は読んだ本です。読み進めてすぐ、この本の内容を頭に叩き込もうと決めました。世の中のことを知るためにも読んでおくべきだと。
この本を読んで、渡邊美樹さんの実行力にとても感銘を受けました。学校や病院、老人ホーム、農業など、現場の人たちが国の政策に対して疑問を抱いているんですよね。その状況に渡邊さん自らメスを入れて動き出すんです。国に頼らず民間主導で事業を進める姿に、心を揺さぶられました。
「ご遺族のために」葬儀業界のあるべき姿に導いた
僕も葬儀業界の団体と戦ってきました。以前は消費者の弱みにつけ込むような姿勢だったんです。葬儀費用を開示せず、そのときを迎えても葬儀にかかる費用が分からない。本来はご遺族や故人の気持ちが最優先のはずです。葬祭業のあるべき姿に戻したいと思いました。ご遺族に価格を提示して、ご予算に応じて選んでもらう。選んだ予算の中で最大限、悲しみに寄り添ってサポートしていくのが、目指すべき姿だと思ったのです。
――特に好きな部分はどこですか。
「夢教育」について語ったシーンです。姉が学校の先生をしているので、より身近に感じたエピソードでした。文部科学省が定めた義務教育の授業は、答えのある内容が多い。しかし実社会では、答えは無限にあります。本来は、子どもたちがのびのびと学べる環境が学校のはずです。夢を見ることに委縮してしまうような場所ではいけない。そこで渡邊美樹さんが「夢学園」と名前を付けて、学校経営を始めたんです。